
公開 : 2021.12.16 | 更新 : 2022.01.07
東大生がおすすめ!本やマンガで「多様な視点」を養おう!
さて、12月1日にカルペ・ディエム社長でこのメディアのライターもしている西岡壱誠さんの『東大生の本棚』が文庫版で発売されました!
今回は、東大生の僕が、この本のことを詳しく解説したいと思います!
東大生は多様な視点で作品を読むのが得意
この本では、東大生がどのように漫画や小説・ライトノベルを読んでいるのかが語られています。
「そもそも東大生ってマンガとか読むの?」とお思いの方もいるかも知れません。
実は、意外かもしれませんが、多くの東大生も普通にマンガや小説などのエンタメ作品が好きで、お気に入りを聞けばすぐに答えが返ってきます(ちなみに僕は『スラムダンク』が大好きです)。
ただし、東大生が他の人と違うところがあるとすれば、マンガや小説を読んでいても、ただ「面白い」では終わらない場合が多いところです。
「こっちの登場人物はこうだけど、別の人から見ると……」
「悪役の言い分にも一理あるな……」
など、登場人物それぞれの立場からものを考えたり、発言の中に隠された真意を汲み取ろうとしたりしている人が多いと感じます。
例えば、布施川さんが『鬼滅の刃』について考察したこちらの記事。
https://media.carpe-di-em.jp/life/412/
この記事のテーマは、「煉獄杏寿郎はどんな視点で『俺は俺の責務を全うする!』と発言したのか?」です。煉獄さんが作品中でどんな立ち位置にいて、どういう考えであの発言をしたか、ということを考えながら読んでいるからこそ、こうした考察に繋がるわけですね。
『東大生の本棚』では、「ONEPIECE」や「進撃の巨人」など、様々なマンガ作品を東大生がどう読んでいるのかについてまとめています。ポピュラーな作品であっても、いろんな多様な解釈があるんですね。

多様な視点読みが鍛えられる場所
では、このような「多様な視点から考える能力」を、東大生はどこで養っていて、またどこで役に立つのでしょうか?
実はこれは、東大入試で養われて、また求められる能力なんです。
東大入試は、他大に比べて科目数・記述量共に多く、多様な文章を読みこなし、それを自分なりに噛み砕いてアウトプットする能力が必要になります。
こうした試験に向けて勉強を進めるなかで、視点に関する能力も培われていると感じます。
例えば2020年度地理では、「インドとインドネシアでは国語・公用語の広がり方が異なるが、これはなぜか」という問題が出ています。これに答えるためには、インドとインドネシアそれぞれの地域にどんな人がいるのか、その人達は何を考えているか、ということを比較しながら回答することが必要です。
英語では、毎年のように小説やエッセイが1つ出題されます。ここでは、「筆者がなぜこう言ったのか」や、「主語を明らかにしつつ説明せよ」という問いのように、誰が何をしたのか、どういう考えだったかを答えさせることが多いのです。
こうした問題に立ち向かうためには、行為する人や国、組織が誰なのかを丁寧に把握した上で、それぞれの視点に立って主張を理解することが必要になります。こうやって鍛えられているからこそ、東大生は普段から視点を意識するのが得意になるですね。
逆に、普段から視点を意識して小説やマンガを読めるようになれば、入試に取り組む力の基礎がつくことになるでしょう。
そう考えると、マンガというのも馬鹿にできないものですね。

養うためにおすすめの本・マンガと読み方のヒント
『東大生の本棚』では、東大生100人が選んだおすすめの本やマンガが紹介されています。そちらは本書でぜひ確認していただくとして、ここでは僕自身のおすすめ作品とその読み方について紹介します。
今回僕がおすすめするのは、マンガ『リアル』。車いすバスケをテーマにした作品で、著者は『スラムダンク』の作者でもある井上雄彦氏です。
このマンガに登場する人物たちは、それぞれが複雑な問題を抱えています。
例えば一番最初に登場する「野宮」。彼はいわゆる「問題児」で、部員とのいざこざなどを理由にバスケ部を辞め、バイクで大事故を起こした末に高校を退学します。
これだけ見ると「なんてやつだ」と思うかもしれません。しかし、彼がバスケ部を辞めたのは、スクールカースト上位の部長、「高橋」による徹底的な無視が原因でした。
ではその高橋が悪いやつなのかと言うと、そう簡単に責める事もできない事情があります。彼は野宮が退学してすぐ、トラック事故で半身不随になり、いきなりどん底に突き落とされるのです。
そもそも、野宮とソリが合わなかったのも、少年期に父からなかなか認めてもらえず、自己認知が歪んでしまったことが一因のように描かれます。
これだけお読みいただいても分かる通り、状況はかなり複雑ですよね。
一方だけに感情移入すると、他方がいかにも悪そうに見えてくる。しかしよくよく考えて視点を入れ替えてみると、そう簡単な話ではないと分かる。それがこの作品の醍醐味です。
「彼はこう言ってるけど、言われた相手の視点で考えるとどうなんだろう?」「セリフがあまり描かれない彼は何を考えているだろう?」などと考えてみることで、思考力を鍛えつつ、『リアル』の深い面白さに気付けるはずです。
興味を持たれた方は、ぜひ手にとってみてください。

いかがでしたか?東大生の多くは多様な視点で読書していて、それが入試にも役立つということがわかっていただけたでしょうか。
今後も、『東大生の本棚』で紹介される東大生の本の読み方や選び方、LIFEのライターが独自に選ぶおすすめ本について紹介していきます!本と合わせてぜひご覧ください!

河内誠人
カルペディエムLIFE編集長。法学部で勉強中。数年ぶりに紙のカードゲーム(デュエルマスターズ)復帰しました。