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~他人と関わりつつ自分の興味を深める~ 東大推薦入試から読み解く、今求められる力とは?

~他人と関わりつつ自分の興味を深める~ 東大推薦入試から読み解く、今求められる力とは?

【東大推薦入試から読み解く、今求められる力とは?】

東大の推薦入試で求められている「力」は、一般入試で求められる学力とは一味違います。では、その「力」とはどんなものでしょうか。推薦入試を突破した東大生と対談することを通して、東大が求めている「力」、ひいては社会が求めているものに迫ります。

【東大推薦入試から読み解く、今求められる力とは?】

東大の推薦入試で求められている「力」は、一般入試で求められる学力とは一味違います。では、その「力」とはどんなものでしょうか。推薦入試を突破した東大生と対談することを通して、東大が求めている「力」、ひいては社会が求めているものに迫ります。

 

 

東大推薦入試の要項から今求められる「力」を読み解く企画、今回は農学部です!

農学部の要項を確認したい方は、東京大学のHPからご確認ください。 

 

農学部の「求める学生像」は、大きく分けて以下の3点です。

 

①動植物・微生物が持つ多様な機能に興味を持ち、自ら主体的にそれらを学ぶ

②学びをさらに応用して社会に役立てたいという強い意欲を有している

③分野横断的アプローチを取り入れつつ、社会問題の解決にグローバルな視点から貢献しようとする

 

 

今回は、そんな農学部推薦に合格した なっつさん(2020年入学)と対談してきました。

 

ーー本日はよろしくお願いします。まず、推薦入試に向けてはどんな準備をしたか教えて下さい。

 

生物オリンピックとかは全くやっていませんでしたが、そのかわり、自主的に研究をしていました。具体的には魚に寄生する寄生虫の研究です。高校生向け、一般向け両方の学会に出席して、発表を行っていました。

 

高校生向けの学会では優秀賞を頂いたりしていたので、入試の際にはそれを実績として提出しました。具体的には、学会に出たときに使ったポスターやスライド、賞の表彰状、論文などですね。

 

今後大学でも寄生虫のことを学べたらいいなと思っています

 

先輩の姿に憧れ、自分も挑戦したいと思うように

 

ーー学会に出たり論文を書いたりするのは、普通の高校生ではなかなかできないことだと思います。そのような活動をするに至ったきっかけは何だったのでしょう?

 

私が通っていたのは中高一貫校で、その間ずっと生物部に所属していました。中学2年生の頃、その生物部の先輩が学会で発表しているのを知って、そこで同時に「学会」というものの存在を知ったんです。

 

それからは、顧問の先生に「私も出たい」と話し、学会を紹介してもらって、いよいよ自分も出ようということになりました。

 

ーー学会を知るきっかけが部活の先輩というのはとても素敵ですね。では、生物に興味を持ったきっかけについては覚えていますか?

 

気づいた頃には生物に興味を持っていた、というのが正直なところです。

 

実家の周りはそれなりに自然環境が揃っていたので、小さい頃からよく虫取りなどをしていました。

 

また、小学生の頃、後に通うことになる中高の文化祭で生物部を見学したとき、そこではカブトムシの幼虫が展示されていたんですね。「カブトムシの幼虫がこんなに取れるなんて!」というのに惹かれて、当時既に生物部に憧れていました。

 

ーーカブトムシの幼虫の多さに惹かれるとは、あまり聞かない志望動機ですね。笑

先ほどのお話の続きで、「学会に出る」という決断自体も、多くの人にとっては一つハードルがあるはずです。どういう思いで出たいと思うようになったのでしょう?

 

私は当時から、何でもチャレンジするのが好きだったんです。なので、先輩が発表しているのを見て、自分もハードルが高いことにチャレンジしてみたいなと思うようになりました。

 

やれることは何でもやってみたい、難しいからこそ挑戦してみたい、という気持ちがありましたね。

 

気になることは何でも自分から調べる

 

ーー「挑戦してみたい」というところに関連して、要項にある「自ら主体的にそれらを学」ぶに当てはまっているな、と思うところはありますか?

 

「主体的」と言っても、その学び方には色々あると思います。その中で特にわたしによく当てはまるのは、やはり好きなもの、興味のあることに対する姿勢です。

 

専門にしている寄生虫のことに興味を持ったら、関連する本や論文は自分で調べてどんどん読み進めていました。

 

学校の授業内容にとどまらず、自分から本を読んだり論文を調べたり、その分野を専門に研究している人のお話を聞きに行ったり……。これは「主体的」と言えるのではないでしょうか。

 

ーー学校の授業を受けているだけではなくて、自分から調べたり、話を聞きに行ったりというのは、「寄生虫」というテーマにもつながっているのかな、と思います。なにせ、寄生虫については生物の授業でもそこまで詳しく取り扱われないですしね。そんな寄生虫を調べ始めたのはどうしてですか?

 

これも生物部の先輩の影響が大きいです。

 

私の高校の生物部は、扱うテーマごとにいくつかの班に分かれていました。そして、魚班、昆虫班などと並んで存在していたのが寄生虫班です。はじめは、もともと好きだった昆虫や爬虫類の班に入ろうと思っていたんですが、寄生虫班の先輩方による熱い新歓に惹かれました。笑

 

身近にいるものだけど普段あまり感じることはない、そんな寄生虫だからこその魅力に惹かれ、興味を持つようになりましたね。

 

ーーちなみに、当時の活動では実際どんなことをしていましたか?

 

実験が多かったですね。DNAを抽出してPCRを行ったりしていました。

PCR:「ポリメラーゼ連鎖反応」(Polymerase Chain Reaction)の略。ウイルス等のDNAを増幅させて検出する技術のこと。

 

先行研究も特になかったので、魚の研究をしている方にアドバイスを頂いたりしつつ、「この寄生虫ならこういう物質構成になっているから、この薬品を使ったらできるんじゃないか」とか、「通常ならありえないけど、この温度なら検査がうまくいくだろう」とかいう話をしていました。

 

ーー前例がないところから試行錯誤したり、必要に応じて専門家の話を聞きに行ったりというのは、まさに主体的に学んでいるなと感じました。

 

社会とのつながりが強い農学部

 

ーー続いて、「他の自然科学・社会科学・数理科学も含めた分野横断的なアプローチを幅広く取り入れ」ることの重要性は何だと思いますか?

 

この「分野横断的」という話は、私が受験した当時の要項にはなかったので興味深いです。

(なっつさんが受験した2020年当時の要項はこちら

 

農学部は、全体として生物分野がメインです。なので、当然生物の知識が一番重要になってきます。要項でも「生命に対する理解をもとに」とあるとおりで、これは当時から要項に書いてありました。

 

しかし、実際に農学部の研究を見ていくと、いろいろな種類・手法のものがあると分かります。例えば、シミュレーションを使ってやる研究。この手法を用いるには、生物の知識だけでなく、数学的な知識も必要なはずですよね。

 

ーーなるほど。当時は要項になかったということも合わせて考えると、分野横断的な知識や手法が一層求められるようになってきたのかもしれませんね。ちなみに、要項にある「社会科学」との関連性についてはどうでしょう?

 

私の専門分野と社会とのつながりで言うと、養殖に関する研究などが思いつきます。

 

養殖と寄生虫は結構関わりがあって、養殖を進める際の障害として寄生虫や病気があるんです。そうした課題を解決するために薬剤を開発したり、寄生虫について詳しく調べたりということは、農学部の研究が社会につながっている一例だと思います。

 

全体的な傾向から言っても、農学部は理学部などに比べ、実践的な研究が多いように感じます。そういう意味で、社会とのつながりを特に大事にしているということかもしれません。

 

ーー確かに、例えば「農業」と言ったとき、これはただ知的好奇心を満たすためにやっている営みではないですよね。食料自給率の問題なども含め、社会課題のことも考えてほしいという大学からの意識を感じました。

 

たくさんの人と関わりながら、幅広い興味に従って学びを深める

 

ーーさて、なっつさんは今2年生ということで、来年からいよいよ本格的に農学部生として学んでいくことになります。今はどんなことを専攻しようと考えていますか?

 

今後については迷い中です。寄生虫ももちろん惹かれますが、私が所属する水圏生物科学専攻には色々な研究室があるんですよね。

 

今年の春には大気海洋研究所のインターンに行っていて、そこで触れたのは水圏微生物の分野でした。これも面白そうだな、ということで、研究室見学をしてみてから考えてみようと思っています。

 

また、2,3年ほど前に農学部で「One Earth Guardians育成プログラム」というものが始まりました。100年後の地球について、グローバルな視点から考えるというものです。今まで環境問題についてはあまり考えてこなかったので、これを機に検討するのもありだなと思っています。

 

ーーアンテナを高く張っていることがよく分かりました。その興味分野の広さは流石です。最後に、どんなことを意識してこれから学んでいきたいですか?

 

今後は、色々な分野の人と関われるだけ関わって、自分の話を聞いてもらったり、逆に相手の話を聞いたりして、意見交換していきたいと思っています。

 

高校生の頃は、学会に行っても寄生虫を専門にしている人にはなかなか会えませんでした。

 

その代わりに、違う分野の人から質問されたり、逆に自分が他の人の研究発表を聞いたりすることが多かったんです。自分では考えたことのなかった視点から質問や意見をもらったりして、それがとても面白いと感じていました。

 

なので、今後も色んな分野の人と積極的に関わって、新しい視点で自分の研究を捉え直したり、より深く考えたりしていきたいです。

 

ーーありがとうございました。

 

まとめ

 

今回の対談では、文字通り「動物・植物・微生物が持つ多様な機能に興味を持ち、主体的にそれらを学び、深く究明」する なっつさんの姿が印象的でした。

 

周囲にまだ寄生虫の専門家がいない中で、自分の興味に従って探究を続けていく。こうした姿は、まさしく「主体的」ですね。

 

また、社会とのつながりを意識しているのは、農学部ならではの特徴だと感じました。研究を人間社会・生活にどうやって活かすか。こうした視点が、農学部、ひいては社会から求められているのでしょう。

 

次回も他の学部の推薦生とともに、社会から求められている力について考えていきます!

 

河内誠人のプロフィール画像

河内誠人

カルペディエムLIFE編集長。法学部で勉強中。数年ぶりに紙のカードゲーム(デュエルマスターズ)復帰しました。