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~基礎を大切にする~ 東大推薦入試から読み解く、今求められる力とは?

~基礎を大切にする~ 東大推薦入試から読み解く、今求められる力とは?

【東大推薦入試から読み解く、今求められる力とは?】

東大の推薦入試で求められている「力」は、一般入試で求められる学力とは一味違います。では、その「力」とはどんなものでしょうか。推薦入試を突破した東大生と対談することを通して、東大が求めている「力」、ひいては社会が求めているものに迫ります。

【東大推薦入試から読み解く、今求められる力とは?】

東大の推薦入試で求められている「力」は、一般入試で求められる学力とは一味違います。では、その「力」とはどんなものでしょうか。推薦入試を突破した東大生と対談することを通して、東大が求めている「力」、ひいては社会が求めているものに迫ります。


今回は、東京大学理学部の推薦生と一緒に要項を読んでいきます。

 

理学部の要項の詳細を確認したい方は、東京大学のHPからご確認ください。

 

「求める学生像」として、以下の4点を挙げています。

 

①自然科学への強い関心と知的冒険心を持つ

②自然科学や人類社会の発展に寄与する

③自然科学の発展や産業界・社会の進展において、リーダーとなる資質を持つ

④自然科学における卓越した能力を有する

 

これまでと同じように、人類社会への貢献というキーワードが出てきていますね。今回は、「物理学・化学」をテーマにして合格した西さん(2019年入学)と対談してきました。

 

 

ーー今日はよろしくお願いします。

 

 

西さん:お願いします。

 

 

ーー今回の企画は、「東京大学の推薦入試要項を推薦生と読んでいくことで、社会が大学生に求めている力を考えよう」というものです。まずは西さんが推薦入試に向けて提出した資料について教えて下さい。

 

 

西さん:物理オリンピックと化学オリンピックの日本代表候補になった実績と、国内大会の成績を提出しました。国内大会は、物理チャレンジで1位、化学グランプリで5位以内を獲得しました。あとは他の学部と同じく、志望理由書ですね。

 

 

ーー理系の方は、要件にある「卓越した能力」を証明する資料として、大会実績を提出される方が多いですよね。志望理由書にはどのようなことを書かれたんですか?

 

 

西さん:私は大学で物理を学びたいと考えていたのですが、物理はその中で「理論物理学」と「実験物理学」という2つに分かれます。理論は主に数式を用いて、実験は実験装置やデータを用いて、それぞれ自然現象にアプローチします。

 

実験には装置などが必要となるため、どうしてもお金がかかるのですが、東京大学は研究費用が多くあるので実験分野に強いという特徴がありました。私はもともと実験分野に興味があったため、東京大学を志望したという経緯になります。

 

 

ーーなるほど。一口に物理といっても、そのアプローチ方法に違いがあるんですね。

実験に興味があるというのには、何かきっかけがあったんですか?

 

 

西さん:物理を勉強し始めた頃は、理論物理学の方がかっこいいと思っていました。「天才物理学者」といったら、理論物理学の方が多いですしね。でも、高校生のときに研究所のイベントに参加したら、実験がすごく面白かったんです。それがきっかけですね。

 

 

学校での勉強の延長線上にあるもの

 

ーー国内大会で優秀な成績を残し、国際大会の代表にまで選出されるというのは、まさに卓越した能力を有すると言えると思います。それほどまでになれた要因は何だと思いますか?

 

 

西さん:まず前提として、中学生という早い段階から、物理や化学の大会の存在を知っていたことがあると思います。その上で、学校で習う基礎的な内容でつまづかず、その先の発展的な内容にまで興味を持てたことが一番の要因ですね。

学校の勉強に真面目に取り組んでいたことで、発展的な勉強をする下地ができていたことは大きかったと思います。

 

 

ーー何をするにしても、まず基礎を固めるのは大事ですよね。基礎的な勉強を積み重ねるにはそれなりの労力が必要だと思うのですが、西さんの場合どのようなことがモチベーションになっていたんでしょうか?

 

 

西さん:自然科学に興味があったことだと思います。だからこそ、楽しく勉強することができていました。

 

 

ーー確かに、「好きこそ物の上手なれ」という言葉がある通り、興味があることは楽しく勉強することができる気がします。自然科学への興味を持ったきっかけは何ですか?

 

 

西さん:小さい頃からよく虫取りや山探検をしていたことがきっかけです。実家が鹿児島なので、ロケットや火山にも日常的に接していたのは大きいですね。

 

さらには、学校の図書館に大学の教科書が置いてあったり、授業中の先生の小話が面白かったからこそ、単に好きという気持ちが学問的な関心にまで発展したのだと思います。振り返ると、恵まれていた環境だったなと感じます。

 

 

架け橋としてのリーダー

 

ーー要項には、「自然科学の発展や産業界・社会の進展において、リーダーとなる資質を持つ」という要件が書かれています。ここでいうリーダーとなる資質とは、どういったものだと思いますか?

 

 

西さん:難しいですね。一つには、幅広い知識を有し、いろいろな考え方ができるということかなと思います。

 

実験物理学の研究グループのリーダーを想定すると、実験装置を理論的に組み立てる人や、実際に作業する土木関係の人など、様々な人とコミュニケーションをとることが必要になります。

研究者に限らないさまざまな人が属するコミュニティを知り、考えを理解できるというのが求められているのかな、と思います。

 

 

ーー実験をするにも、色々な立場の人が関わっているんですね。研究というと、私のような一般人とはかけ離れているような印象を受けてしまいます。だからこそリーダーは、研究成果を発表するなどして、研究の世界と一般社会とを結ぶ架け橋にもなり得るのかなと思いました。

 

 

西さん:それは私も意識しています。実験物理学は装置を作るのにお金がかかります。その予算は、国家プロジェクト並みになることもしばしばです。ですから、社会に対して実験の内容やその意義を説明するのは、科学者の責任だと思っています。

私自身、そういった責任をしっかりと引き受けられる人間になりたいと思っています。

 

 

 

基礎研究の楽しさ

 

ーー続いて、要項の「人類社会の持続的・平和的発展に貢献できる学生」という要件についてはどう考えていますか?

 

 

西さん:社会の発展は大事なことだと思うので、自分も基礎研究というところで携われたらと感じています。

 

私は理学系で、自然現象の原理を追求するというのが基本姿勢となります。ですので、直接実社会に役に立つようには見えないかもしれません。

 

しかし、基礎研究によって人類が少しだけ賢くなる、ということは確かだと思います。災害を無くす、というような実利に直結することはできないので無力感を抱くこともありますが、基礎研究を積み重ねることで人類全体がちょっとずつ賢くなる、その歩みは止めてはいけないことなんだと思っています。

 

 

ーー「基礎研究によって人類社会がちょっとずつ賢くなる」という言葉を聞くと、基礎研究は私たち生活を下支えするものとも言えるのかもしれませんね。目先の利益だけでなく、人類社会を長期的に見据えているからこそ出てくる言葉だと思いました。そのように考えるようになったきっかけはありますか?

 

 

西さん:ニュートリノの研究でノーベル賞を受賞された小柴昌俊さんの、「知のフロンティア」という言葉を知ったことがきっかけです。フロンティアは最前線という意味ですね。その最前線を広げていく営みが研究だとおっしゃっていました。

 

さまざまな問題に対して、従来の方法で解決することも手ですが、一見関係ないところからアプローチして解決することもしばしばあることです。「知のフロンティア」が広がっていればいるほど、それまで解決できなかった問題の解決や、社会の発展につながる可能性が高まるということです。

 

例えば、「電子」の研究の例が挙げられます。当時は、興味が湧くからという理由だけで研究が進められていたはずですが、それが発展して現代の私たちの生活になくてはならない知識となりました。

 

 

ーー役に立たなさそうな研究であっても、思わぬところで世界を変えるかもしれないということですね。自分がしている研究がいつか世界を変えるかもしれないと思うと、研究のモチベーションに繋がりそうです。

 

 

西さん:大学で勉強をしていると、すぐに役に立つ・立たないという表面的なことばかりを見るようにはなってほしくないのだろうなという思いを感じます。理学部が求めているのも、自然科学に対する関心や、未知の領域を開拓していく冒険心です。

 

私自身も、そういった関心や冒険心がないと、基礎研究はなかなか続けられないのではないかなと思います。もしかしたら役に立つかもしれないし、立たないかもしれないけど、自分の好奇心に向かっていける、そんな人材が求められているのだと思います。芸術にも近いものがありますね。

 

 

ーー好奇心にひたすらに向かっていく、その純粋さというのが大事だということですね。私も自分の好奇心を大切にしていきたいと思いました。ありがとうございました。

 

 

西さん:ありがとうございました。

 

 

まとめ

今回の西さんのインタビューから、卓越した能力の土台には、学校で習う基礎的な内容の理解があるということがわかりました。そしてそこでつまづかなかったからこそ、発展的な内容にも興味を持つことができたということでしたね。

 

また、西さんが専門とする基礎研究についても理解を深めることができました。すぐには役に立たなさそうな研究であっても、将来社会に対して大きなインパクトを与えるかもしれないとのことでした。

 

研究の継続のために必要な「基礎」と「好奇心」は、理学部に限らず、大学のどの学問においても必要なことだと思います。そんな純粋な好奇心を大切にしていきたいですね。

 

次回以降も、他の学部の推薦生とともに、社会から求められている力について考えていきます!

 

めいちゃんのプロフィール画像

めいちゃん

教育学部で勉強中。生き方はジブリから学びました。トトロのめいちゃんみたいな健康女子になることが夢。