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~問題を本質的に捉える~ 東大推薦入試から読み解く、今求められる力とは?

~問題を本質的に捉える~ 東大推薦入試から読み解く、今求められる力とは?

【東大推薦入試から読み解く、今求められる力とは?】

東大の推薦入試で求められている「力」は、一般入試で求められる学力とは一味違います。では、その「力」とはどんなものでしょうか。推薦入試を突破した東大生と対談することを通して、東大が求めている「力」、ひいては社会が求めているものに迫ります。

【東大推薦入試から読み解く、今求められる力とは?】

東大の推薦入試で求められている「力」は、一般入試で求められる学力とは一味違います。では、その「力」とはどんなものでしょうか。推薦入試を突破した東大生と対談することを通して、東大が求めている「力」、ひいては社会が求めているものに迫ります。


今回は、東京大学法学部の推薦生と一緒に要項を読んでいきます。

法学部の要項を確認したい方は、東京大学のHPからご確認ください。

 

「求める学生像」は、大きく分けて以下の3点が挙げられています。

 

①優れた基礎学力を有していること

②現代社会の諸問題に強い関心を持つこと

③リーダーシップを発揮し、他者との対話の中で課題を解決できること

 

今回は、法学部に合格した加賀さん(2018年入学)と対談してきました。

 

 

ーー今日はよろしくお願いします。

 

 

加賀さん:お願いします。

 

 

ーー今回の企画は、「東京大学の推薦入試要項を推薦生と読んでいくことで、社会が大学生に求めている力を考えよう」というものです。まずは加賀さんが推薦入試に向けてどんな準備をしてきたか教えて下さい。

 

 

加賀さん:志望理由書以外に、1つは、高校生の時にやっていたボランティアの活動を証明する資料を提出しました。

 

もう1つ、高校の総合学習で調査していたものをレポートにしたものも準備しました。もともと学校で用意されていたプログラムに合わせて始めたものだったんですが、「震災関連死」というテーマは推薦入試でも活かせるな、ということで、入試用に内容を再構成しましたね。

 

 

本質的な問題発見・独創的な課題設定

 

ーーありがとうございます。では早速要項の方に移ります。要項には「現実の中から本質的な問題を発見し、独創的な形で課題を設定する」という文言がありますが、これに対してどのようにアプローチしましたか?

 

 

加賀さん:自分の場合は、総合学習でたまたま調査していたテーマがこの文言に合致するなと思ったんです。もともと持っていたアウトプットを、法学部が求めている力に合わせて調整していこうという意識でした。

 

「本質的な問題」ということについては、問題を構造的に見れるかどうかが重要だと思っています。4年生になって感じますが、法学部の勉強では論理的思考力が核になります。この論理的思考力というものが、問題を構造的に見ていくというところに直結してくると思っています。

 

「独創的な形で」については、身の回りの事象から問題を設定するのが重要だと考えました。当時の法学部の志望理由書には、「社会問題で一番興味のあるものは?」という問いがあり、書類選考を通過した後のディスカッションではチケット転売がテーマでした。

 

身の回りの問題に学問を転用するという姿勢が独創性にもつながるんじゃないかな、と思っています。

 

 

ーー僕は、「独創的」という言葉からは、誰もが思い付かないようなものという印象を受けます。しかし、今聞いた話からすると、「身近だけど実は本質的に捉えると問題がある」ということを発見するのが「独創的」ということになるんでしょうか。

 

 

加賀さん:今ある問題って、要するにこれまでに解決されてこなかった問題ということですよね。すでに存在した杓子定規に当てはめるだけでは解決できなかったからこそ、今まで残っているということです。だからこそ、それを解決するためには新しい独創的なアプローチが必要だ、ということです。

 

ーーありがとうございます。「今ある問題は、すでに存在した方法では解決できなかったために今まで残っていて、だからこそ独創的アプローチが必要」というのは、まさに本質的なものの捉え方をされているな、と思いました。

 

 

イニシアティブを発揮

 

ーー「問題の解決に向けてイニシアティブを発揮できる」という点はどうアピールしましたか?

 

 

加賀さん:最初に少し話した通り、自分は高校3年間でボランティア活動をしていました。ただ、単なるボランティアというよりも、高校生だけで組織している学生団体を運営していた、というのが正確です。

 

メンバーの問題意識に応じて、物資支援をしたり、募金活動をしたり、イベントを主催したりと、色々なプロジェクトを回していました。ここでやってきた活動が要件に合致するのだろうなと感じて準備を進めました。

 

 

ーー「イニシアティブを発揮」というと、ただ参加しているだけでは不十分な気がします。加賀さんはその団体でどういったことをしていたんでしょう?

 

 

加賀さん:最初の1年半くらいは、メンバーとしてそのプロジェクトに参加していました。本当に色々なことをやっていて、いわゆるボランティアだけでなく、活動資金を得るためにフリマに出品したり、フェアトレードの商品を開発したりしていました。

 

 

ーー本当に活動が多岐にわたるんですね、イメージしていた「ボランティア」とは全く違いました。笑

 

 

加賀さん:そうですね、当時のことを思い出してみても、本当に色々なことをやっていました。笑

 

本題に戻ると、後半は代表になり、団体運営やチームづくりをテーマとして活動していました。これは「イニシアティブを発揮」していると言えるはずです。

 

推薦入試のためにやっていたわけではなく、純粋に活動していて楽しかったです。それに、幹部としてミーティングを運営したり、複数のプロジェクトを管理・運営をしていた経験は、今の自分の基礎力になっていると思います。

 

 

ーー名前だけの「代表」ではなく、実際に複数のプロジェクトを俯瞰しながら管理していたというのは、まさに「イニシアティブの発揮」を感じました。

 

 

加賀さん:3年間活動して、大学のサークルや企業、青年会議所など、色々な人とつながることができました。貴重な経験ができましたね。

 

自分のいた団体には顧問も協賛者もいなくて、いろんな学校から集まった高校生だけで運営していました。そんな団体は周りになかったので、その分面白い経験をさせてもらえたと思います。

 

高校生だけな分、代表としての責任感も大きかったですし、発信力やブランディングなどはかなり意識していました。

 

 

ーー顧問も協賛もないというのはすごいですね。それをまとめ上げていた加賀さんの力量がよくわかります。

 

 

基礎的学力

 

ーー​​続いて、法学部でとりわけ「優れた基礎的学力を備える」ことが重視されているのはなぜだと思いますか?これまでは教育学部や教養学部の方にお話を伺ってきましたが、それらの学部では学力は要件になっていませんでした。

 

 

加賀さん:他の学部で要件にしていないのは意外でした。共通テストで8割以上、というのは全学部で要求されていたはずなので、共通理解として学力は重視されていると思います。それでも、明言しているというのは目を引きますね。

 

先ほども言ったとおり、法律の勉強をしていて感じたことは、「論理的思考力が一番大事」ということです。他にも、抽象と具体を行き来する想像力がかなり重要だと思っています。

 

さらには、結局暗記していないと始まらない、というところもあると思っています。先生が授業中に「暗記して」と直接いうことはあまりありませんが、それでも暗記すべき事柄というのはありますよね。

 

これらを総合すると、文章の読解力を試す国語英語、抽象と具体を行き来する想像力を鍛える数学、暗記の訓練になる理科社会、というように、5教科7科目が重要なんだなと感じます。大学で必要になる力は、基礎的な科目における学力でも測れるんだなと思うようになりました。

 

ただ、こういうことは高校生のことには気づけませんでしたね。

 

 

ーー「高校までの勉強なんて大学や社会で使わないから意味ないじゃん!」という人もいますよね。私も、科目そのもので身につけた知識だけでなく、勉強の中で得た基本的な能力は大事だと思います。ただ、この重要性を伝えるのは結構難しいですよね。

 

 

加賀さん:先ほど自分が上げた論理的思考力や読解力などが、本当に5教科7科目でしか得られないものなのか、それとも他の活動でも得られるのかは自分にもわからないです。そこが伝える難しさにも関わっているかもしれません。

 

 

ーー東大法学部がここで要求しているのはあくまで「学業成績に秀でている」ことで、その本質を理解しているか、ということまでは問われていませんよね。入学する時点でわからなくても、大学に入ってからそうした本質的能力の必要性がわかればいいよというスタンスなのかな、と思いました。あとは、美術なども含むというところで、幅広い科目に興味を持ちなさい、というメッセージも感じます。

 

 

加賀さん:法律は社会のあらゆることを規定しているので、その道で活躍しようと思ったら幅広い教養が必要になるんですよね。そういう意味でも、幅広く学んでおくことが求められているんだと思います。

 

 

ーーありがとうございます。「他者との対話を通じて、その課題の解決に主体的に貢献する」とはどういうことだと思いますか?またその重要性をどう考えますか?

 

 

加賀さん:法学部だけディスカッションを課しているところから、いかに法学部が対話を重視しているがよくわかりますよね。チームで協働できるか、そこでいかにパフォーマンスを発揮できるかというコミュニケーション能力に注目しているんです。

 

また、求める学生像のところにある「リーダー」というのも、他者との円滑なやり取りが求められる役職ですよね。リーダーとして組織をマネジメントしていける人、組織や会議に主体的に関わっていける人を評価しているんだろうなと思います。

 

勉強をしてそれを社会に還元していける人材を育成するためには、コミュニケーションというところが必要なのかな、と思います。とにかく学者を育成したい、というだけではないんだろうなと。

 

 

ーーまさに、東大がアドミッション・ポリシーで掲げる「市民的エリート」ですね。

 

 

加賀さん:そうですね。さらに言えば、仮に学者だったとしても、研究することが中心とはいえ、学術的な会議で発言したり、ニュースでコメントしたりと、色々な場面で社会にインパクトを与える役割も担っています。そういったところで活躍できるような、コミュニケーション能力を持った人に入ってきて欲しいのかなと思いました。

 

 

ーー法学部は特に書きぶりからして、研究第一、学術に熱い思いを持つ者を求む、というような推薦要項ではないですよね。

 

 

まとめ

 

今回の対談の中では、「本質的」「独創的」の解釈が特徴的でした。身近な問題はこれまで解決されてこなかったから存在する、だからこそ新しいアプローチの設定が大切だという話も示唆的でしたね。問題を本質的に捉え直す力が必要とされているのかもしれません。

 

また、基礎学力が必要な理由についても聞くことができました。この話が、基礎科目を学ぶすべての学生のモチベーションにつながっていたら嬉しいです。

 

加賀さんには、ディスカッションの極意についてもたっぷり語っていただきました。こちらについては、別記事にてご紹介する予定ですので、公開をお待ちください。

 

次回以降も、他の学部の推薦生とともに、社会から求められている力について考えていきたいと思います!

 

河内誠人のプロフィール画像

河内誠人

カルペディエムLIFE編集長。法学部で勉強中。数年ぶりに紙のカードゲーム(デュエルマスターズ)復帰しました。