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東大生が考察!乃木坂新曲『君に叱られた』が今までの表題曲と全く違うわけ

東大生が考察!乃木坂新曲『君に叱られた』が今までの表題曲と全く違うわけ

 

乃木坂の28thシングル『君に叱られた』が先日発売になりました。私は以前のオタク記事(こちら)を執筆しています。そちらもぜひ読んでみてください!

 

今回は、新曲で感じたことについて、乃木坂表題曲の通史という目線で大きく捉えながら考えていきたいと思います。最後までお付き合いください。

 

 

恋愛ソングという意外性

今回のシングルのセンターは4期生の賀喜遥香さんです。今回のシングルが表題曲初センターで、遠藤さくらさんに続く4期生で2人目の表題曲センターを務めています。

また、作曲はyouth caseさんで、同じく賀喜遥香さんがセンターの4期生楽曲『I see…』の作曲もされています。もしかしたら作曲家との相性がいいのかもしれません。

 

そして何より、この曲は恋愛ソングなんです

 

最初に『君に叱られた』を聞いたとき、2作連続で恋愛ソングを表題曲に起用したということに気がついて少し驚きました。最近は『シンクロニシティ』や『Sing Out!』など、恋愛ソングではなく、自己啓発系や応援ソングなどが多かったからです。

 

私個人としてはしばらく恋愛ソングは使わないのかなぁと思っていました。同じ坂道グループの日向坂は表題曲を全て恋愛ソングにしていることから、乃木坂と日向坂で曲イメージを区別しようという意図があるのではないか、と思っていたからです。

 

ところが前作の『ごめんねFingers crossed』で久しぶりに恋愛ソングが表題曲に使用され、かなり驚きました。さらに今回も被せてくるとは……。もしかしたら、7thの『バレッタ』~9th『夏のFree&Easy』以来の恋愛ソングサイクルが、再びやってきたということなのでしょうか?「歴史は繰り返す」というように、乃木坂10年の歴史はいよいよ1周したということなのでしょうか。

 

歌詞を読んでいても、今までの乃木坂のシングル曲とは違うなと感じました。一体何が他の表題曲とは違うのでしょうか?

 

 

唯一無二の状況設定

私が感じた違和感は、恋愛ソングがシングル曲で連続したのは久々だが、恋愛の何気ない一コマをシングル曲で描くのは初という、懐かしさと目新しさの両方を感じた点にありました!

 

まず懐かしさについて考えます。明確に男女間の恋愛ソングである、例えば「恋」や「好き」などの言葉が入っているシングル曲は全28曲中約15曲あります。数えてみると半分ほどが恋愛ソングで占めています。もう少し詳細に見ていきましょう。

 

昔は恋愛ソングが連続することも多くありました。『おいでシャンプー』、『走れ!Bicycle』、『制服のマネキン』、『君の名は希望』の期間や、『バレッタ』、『気づいたら片想い』、『夏のFree&Easy』の期間など乃木坂の最初の頃は恋愛ソングが比較的続いていました。

 

ところが、『逃げ水』以降、『僕は僕を好きになる』まで恋愛ソングの印象が強い曲はシングル曲に使われてきませんでした。

そして今作で恋愛ソングが連続しました。10年という歴史の中で、初期の恋愛ソングが多かった頃をイメージさせるようになったのです。

 

続いて目新しさについて深掘りしていきます。

 

恋愛ソングといっても、恋愛のどの部分を切り取るのかで曲の印象は大きく変わりますよね。片想い中を描けば、恋焦がれる相手に振り向いてもらおうとする必死さが伝わる曲になります。その一方で失恋を描けば、そんなはずじゃなかったという悲壮感が伝わる曲になるはずです。

 

乃木坂で片想いといえば『気づいたら片想い』ですね。片想いが片想いのまま終わっていく様子を女性目線から描いた曲です。

 

失恋ソングでいえば前作の『ごめんねFingers crossed』でしょうか。こちらは年の離れたカップルが最終的に恋が冷めてしまって別れる部分を描写しています。主人公の「僕」の気持ちの揺れ動きが、少しメタな観点から描写されていて冷めている感じが一層際立つ非常に複雑な悲しさを描いた曲になっています。

 

このように乃木坂の恋愛ソングは、恋の始まり(またはもっと前の片想い)、もしくは失恋を描く曲が圧倒的に多かったんです。

歌詞を細かく見ていっても強い思いをぶつける言葉が多く見られています。

 

例えば、『インフルエンサー』では「1から10まで君次第」、「僕は叫んでいる」、という歌詞など至るところに相手の女性に思いを爆発させているような強い表現が散りばめられています。

 

しかし、『君に叱られた』では

「電車の中はうるさくて 知らずに声が大きくなってた きつく聞こえたかもしれない 僕のどこが間違ってるんだ? トンネルに入る前にそう言って」

よくある日常的な痴話喧嘩の雰囲気から始まります。そもそも片想いではなく既に付き合っていることから、ここからの展開としてはこの喧嘩をきっかけに別れる失恋ソングにいく様相を呈しています。

 

ところが、

「そんなに世界を狭くしてどうするの? 僕は頭を殴られたようで」

と彼女からの一言で自分が間違っていたことに気づきます。そして、過ちに気づいた『僕』は

「人混みに埋もれてしまいそうで 僕は謝ることより先に 君と手と手を繋いだ」

と、仲直りに成功しています。もし本当に仲が悪かったら、彼女は怒って手も繋いでくれない、と『僕』が嘆くシーンを描くことでしょう。

 

そして最後は

「僕を叱って 君が叱って ちゃんと叱って 素直に聞けるから」

と今後も『僕』が過ちを犯した時には指摘してくれる彼女が居続けることを示唆する表現で締めくくられています。ここから別れて独りになる展開は想像しづらいでしょう。

 

『君に叱られた』をまとめると、電車の中で自分が正しいと思い込んでいる「僕」が彼女からの指摘で見失っていたことを思い出す、という歌詞になっています。

この曲は、「すでに付き合っているカップル」が、「ある日」、「電車の中」で、「口論」をして、「彼女に叱られることによって」気づきを得る、という5w1hが成立しています。片想いの衝動や、失恋の悲壮感に比べて非常に小さな心の動きを、なんの変哲もない日常から描いていることが分かります。

 

このポイントこそ、今までの乃木坂の恋愛ソングとは一風変わった恋愛ソングであると感じる点なのだと思います。少し脱線しますが、MVもコンセプトは普通の女の子の現代版シンデレラストーリーになっています。やはり、「普通」や「何気ない」などといった言葉が今回のシングル曲には一貫しているようです。

 

 

MVを読み解く

普通の女の子、そして輝くスポットライトを浴びる側、という対比だと、22ndシングル『帰り道は遠回りしたくなる』のMVを想起する方も多いのではないでしょうか?どちらのセンターも絵が上手く生まれは関西など共通点も多いですから、なおさら思い浮かべる方も多いと思います。

 

しかし、この2つのMVにも大きな違いがあります。『帰り道は遠回りしたくなる』のMVは、西野七瀬さんがアイドルとしての自分と美大生としての自分の両方を演じ、それが交錯しながら進んでいくストーリーです。

 

大きな違いは、「いつ」を切り取るのかという点にあります。『帰り道は遠回りしたくなる』の場合、アイドルとしても美大生としても成功している様子を描いています。すなわち、分岐したそれぞれの人生で想像していたキャリアの「最後」を描いた、と言うことができます。

 

一方『君に叱られた』では、自分は普通だと思っている人でも、あるきっかけで脚光を浴びるように変わるということを描いています。すなわち、「切り替わる過程」を描いています。ここが大きく異なります。

 

 

『君に叱られた』に隠されたメッセージとは?

 

なぜ恋愛ソングのモチーフが変わったのでしょうか?

 

これはやはりコロナ禍という昔の通常とは違った生活が長期間続いていることに起因しているのだと思います。ビフォーコロナの時に当たり前だと思っていたことが、実は当たり前ではなかった。毎日の生活というのは、いつ崩れ去ってもおかしくはない、ということをコロナ禍の社会は私たちに突きつけています。だからこそ、「何気ない平和な一コマから得られる気づき」というテーマが表題曲として使われ、そして乃木坂の新たな1ページを描いていくことになるのだろうと感じました。

 

 

山田亮進のプロフィール画像

山田亮進

リアルドラゴン桜プロジェクト講師。主体的に勉強する楽しさを伝えるため日々奮闘中。オンライン授業の毎日で、生活は完全なニート状態。