
公開 : 2021.09.16 | 更新 : 2022.01.05
~好きをとことん追究する~ 東大推薦入試から読み解く、今求められる力とは?
【東大推薦入試から読み解く、今求められる力とは?】
東大の推薦入試で求められている「力」は、一般入試で求められる学力とは一味違います。では、その「力」とはどんなものでしょうか。推薦入試を突破した東大生と対談することを通して、東大が求めている「力」、ひいては社会が求めているものに迫ります。
- 第 0 回 : 3分で分かる東大推薦入試
- 第 1 回 : ”自分なりの”課題に粘り強く取り組む(教育学部)
- 第 2 回 : 好きをとことん追究する(教養学部)
- 第 3 回 : 問題を本質的に捉える(法学部)
- 第 4 回 : 基礎を大切にする(理学部)
- 第 5 回 : 他人と関わりつつ自分の興味を深める(農学部)
- 第 6 回 : 作品から感じとる、伝える(文学部)
【東大推薦入試から読み解く、今求められる力とは?】
東大の推薦入試で求められている「力」は、一般入試で求められる学力とは一味違います。では、その「力」とはどんなものでしょうか。推薦入試を突破した東大生と対談することを通して、東大が求めている「力」、ひいては社会が求めているものに迫ります。
-
第 0 回 : 3分で分かる東大推薦入試
-
第 1 回 : ”自分なりの”課題に粘り強く取り組む(教育学部)
-
第 2 回 : 好きをとことん追究する(教養学部)
-
第 3 回 : 問題を本質的に捉える(法学部)
-
第 4 回 : 基礎を大切にする(理学部)
-
第 5 回 : 他人と関わりつつ自分の興味を深める(農学部)
-
第 6 回 : 作品から感じとる、伝える(文学部)
対談企画第2弾は、東京大学教養学部の推薦生と一緒に要項を読んでいきます。まずは、教養学部の要項をご覧ください。

引用:令和4(2022)年度東京大学学校推薦型選抜学生募集要項
https://www.u-tokyo.ac.jp/ja/admissions/undergraduate/e01_26.html
教養学部の要項の詳細を確認したい方は、東京大学のHPからご確認ください。
内容をざっくり説明すると、「求める学生像」として、
①複数の学問分野に関心を持つこと
②人類社会が直面する諸問題の解決を目指す高い志を持つこと
という2点が挙げられています。
「教養学部」という名前だけあって、複数の学問分野を扱うという点は他の学部とは違う特徴だといえますね。また、「人類社会が直面する諸問題」というスケールの大きなものを対象にしているためか、国際的な活動や語学力なども重視されているようです。
一口に教養学部といっても、さまざまな方向性でアプローチをすることが可能となります。今回は、「国際関係」をテーマにして合格した渡邊さん(2019年入学)と対談してきました。
ーー今日はよろしくお願いします。
渡邊さん:お願いします。
ーー今回の企画は、「東京大学の推薦入試要項を推薦生と読んでいくことで、社会が大学生に求めている力を考えよう」というものです。まず、渡邊さんは現在どのような勉強をされていますか?
渡邊さん:国際関係という分野を、法律、政治、経済など、さまざまな角度から切り込んで勉強しています。特に法律的な観点から、法律で解決できないところを政治でどう調整しているか、法律が政治をどう規制しているのかというようなことを主に考えています。
ーー複数の学問分野から、ということを実践しているのですね。それでは、渡邊さんが高校生時代、推薦入試に向けてどんな準備をしてきたか教えて下さい。
渡邊さん:それまでにやってきた活動を時系列順でまとめたポートフォリオを作成しました。高校の部活で模擬国連の活動をしていて、その経験をもとに考えたことを全面的に押し出しましたね。
具体的には、平和の定義を考え直す必要があるのではないかということです。一般に平和とは、「戦争がない状態」というように「〇〇がない状態」という形で、消極的な定義がされています。しかし自分は、「〇〇がない状態」をさらに超える何かがないと、世界に平和をもたらすことはできないでのはないかと考え、その旨をポートフォリオでは述べました。
※模擬国連…学生が各国の大使になりきり、実際の国連の会議を模擬する活動。担当国や議題についてリサーチをもとにした政策立案や、演説・交渉を行う。
ーー平和の定義ですか、考えたことがなかったですが、確かにそうですね。模擬国連はどのような経緯で始めたのですか?
渡邊さん:父親がフランス人、母親が日本人というバックグラウンドから、国際関係について触れる機会が多くありました。そこで、国と国とを繋ぐことの難しさと重要性を感じ、自分もこの分野にコミットしたいと感じたことがきっかけです。
「自ら課題を発見」
ーー私自身、「自ら課題を発見する」ということは、それまでで強く心動かされた経験、つまりは原体験的なものをベースに、自分なりの視点から課題を導き出すということだと考えています。渡邊さんは、この「自ら課題を発見する」ということについてどう考えますか?
渡邊さん:自分の場合は、模擬国連という部活動を通じて課題を導きました。推薦入試の応募には活動実績を示す資料の添付が求められていたことからも、実績と自分の考えとを結びつけることは得策なのだと思います。
しかしコロナ禍における現在、要項には「コロナ禍で活動が思うようにできないことは分かっているから、実績がないからといって尻込みしないで欲しい」という趣旨のメッセージが載せられるようになりました。実績という側面は前よりも重視されなくなってきていて、それよりも自分自身の課題に対する思いの強さの方が大事になってきているのかもしれません。
ーー確かに、コロナ禍で活動が思うようにできないということはよく話題になりますね。
しかし、渡邊さんのように「平和の定義を見直すべきではないか」というような深い問いは、経験が何もない状態からは生まれにくいようにも思います。ただ興味があるという状態から、考えを一歩進めるためにはどんなことが必要だと思いますか?
渡邊さん:自分の場合、どんなに忙しくても新聞の国際面には必ず毎日目を通すようにしていました。
自分が高校2年生の時には、北朝鮮が毎日のようにミサイルを打ったり、アメリカではトランプ政権に代わって核軍縮交渉が頓挫したりというようなことが起こっていました。そうして世界の流れを追っているうちに、この状態のままではまずいな、という危機感が生まれたんですよね。この時に、今は間違いなく平和に注目すべきだってことが、自分の中で腑に落ちました。
ーー日頃から関心のあるテーマに対して感度を高めるということが大事だということですね。その中で課題を自分事化することができたら、課題に対する思いの強さも生まれそうです。
「卓越した探究力」
ーー続いて、要項にある「卓越した探究力」についてはどのように解釈しましたか?
渡邊さん:一つのことに拘らず幅広い分野の活動をするということと、一つのことだけに深くコミットすることの二つの方向性があると考えています。私は後者を選びました。
模擬国連の全国大会で賞をもらったこと、平和に対して他の人が考えられないくらい深く、新しい切り口で探究していく意思があること推薦入試ではアピールしましたね。
ーー確かに、何か一つの分野で尖っている人というのは、東京大学の推薦生には多い気がします。私は高校生時代、学校と地域との連携によるギネス記録に挑戦した経験があります。この活動をしているときは、尖ろうという意識は特段なく、終わってから特異的だったと感じるようになりました。渡邊さんの場合は、国際関係の分野で尖ろうという意識は元々あったのでしょうか?
渡邊さん:私も活動している時には、そういった尖ろうという意識は全然なかったですね。平和というテーマについてパッションを持っていたのは間違いなかったですが、それが尖っているということに気づいたのは推薦入試で合格することができてからでした。
ーー尖るということを目的にするのではなく、あくまで好きなことや関心を追究した先に、尖っているという結果がついてくるということなんですかね。
渡邊さん:そう思いますね。
あとは、社会の問題を見つけて、とにかく動いてみるということも卓越性の一つかなと思います。
ーー前回の宮島さんへのインタビューでは、先行研究をしっかりと調べた上で自分なりの視点を導入することが卓越性につながるというお話がありました。渡邊さんはこの点についてはどう考えますか?
渡邊さん:実は当時、あまり先行研究を調べずに考えをまとめたという背景があります。というのも、高校生の自分ができる限り先行研究を調べて、「この視点が足りないのではないか」というような指摘をしたところで、大学教授相手では「それは違う」といって弾かれる可能性があると感じていたからです。こう考えると危ない橋を渡ったな、と思いますね(笑)
平和の定義について調べたり、直近の平和学に関する書籍を軽く読んで、そこに言及のなかったものを選んで取り組みました。先行研究を調べるやり方は大学生になってからもできるので、今は等身大の自分が気づいたことを愚直に伝えようという意識でした。
まぁ、先行研究をさらう時間があるのなら、やった方がいいと思いますが(笑)
ーー少しであったとしても先行研究をさらって、そこにはない視点を探しているというだけで卓越性はあると感じました。実際、大学1・2年生のレポートでも数十本も論文を読んだりはしないですもんね。
「文理を問わず、複数の学問分野を横断する」
ーー複数の学問分野を横断するということは、教養学部ならではの特徴だなと感じています。「人類社会の諸問題」という大きなものを扱うためには、一つの分野だけにこだわっていてはいけないというメッセージなのかなと思ったのですが、渡邊さんはどう考えますか?
渡邊さん:まさにその通りだと思います。複数の学問分野に関心を持っていると、他の人の考えや新しい学問分野を受け入れやすくなると考えています。そういう意味で、複数性は大事だと思いますね。
ーー自分が持っている、知っているものとは異質なものを受け入れられることで、大きなテーマに対してもしっかりとアプローチしていけるんですね。学問をしていく上で大事な姿勢だと、改めて感じました。ありがとうございました。
渡邊さん:ありがとうございました
まとめ
コロナ禍で活動が思うようにできない状況にあっても、渡辺さんの場合は毎日新聞を読んで感度を磨く、というように自分なりに課題を設定して探究していく秘訣について考えることができました。自分の興味関心に対する感度を日々高めながら、自分の「好き」に向かってひたすら動くという探究力は、withコロナの時代において新しく必要な力になっていくのかもしれません。
次回以降も、他の学部の推薦生とともに、社会から求められている力について考えていきたいと思います!
参考
グローバル・クラスルーム日本協会|模擬国連について
めいちゃん
教育学部で勉強中。生き方はジブリから学びました。トトロのめいちゃんみたいな健康女子になることが夢。