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~”自分なりの”課題に粘り強く取り組む~ 東大推薦入試から読み解く、今求められる力とは?

~”自分なりの”課題に粘り強く取り組む~ 東大推薦入試から読み解く、今求められる力とは?

【東大推薦入試から読み解く、今求められる力とは?】

東大の推薦入試で求められている「力」は、一般入試で求められる学力とは一味違います。では、その「力」とはどんなものでしょうか。推薦入試を突破した東大生と対談することを通して、東大が求めている「力」、ひいては社会が求めているものに迫ります。

【東大推薦入試から読み解く、今求められる力とは?】

東大の推薦入試で求められている「力」は、一般入試で求められる学力とは一味違います。では、その「力」とはどんなものでしょうか。推薦入試を突破した東大生と対談することを通して、東大が求めている「力」、ひいては社会が求めているものに迫ります。


対談企画の初回は、東京大学教育学部の推薦生と一緒に教育学部の要項を読んでいきます。まずは、教育学部の要項をご覧ください。

 

引用:令和4(2022)年度東京大学学校推薦型選抜学生募集要項

https://www.u-tokyo.ac.jp/ja/admissions/undergraduate/e01_26.html​

 

教育学部の要項の詳細を確認したい方は、東京大学のHPからご確認ください。

 

内容をざっくり説明すると、「求める学生像」として、

①「自ら設定した課題を探究する卓越した資質・能力を有する」こと、

②「なぜ教育学部を志望するのかについて明確な考えを持っている」こと

の2点を挙げています。

 

それらを審査するための資料として、「論文、作品、発表の内容を示す資料等で志願者の卓越した探究能力を示すもの」を求めています。「卓越した探究能力を示すもの」を出せ、と言われると、かなり難しそうな印象を受けますよね。

 

1次選考を通った受験生には、最終的な選抜として、発表と個人面接による総合審査が行われます。ここで、事前に提出した資料に基づいたやり取りが行われるのですね。面接でも、「卓越した資質・能力」、「志望する理由」などについての質疑応答が行われるようです。またも「卓越」が出てきましたね。

 

今回は、「主権者教育」をテーマにして合格した宮島さん(2020年入学)と対談してきました。

 

 

ーー今日はよろしくお願いします。

 

 

宮島さん:お願いします。

 

 

ーー今回の企画は、「東京大学の推薦入試要項を推薦生と読んでいくことで、社会が大学生に求めている力を考えよう」というものです。まずは宮島さんが推薦入試に向けてどんな準備をしてきたか教えて下さい。

 

 

宮島さん:高3の5月になってから受験を決めて、夏休みから準備をし始めました。夏休み前までは生徒会などで忙しかったので、本格的に始めたのは7月の期末試験が終わってからです。そこから11月の出願までずっと準備してきました。

 

 

ーー夏休みに始めた準備はどんなものでしたか?

 

 

宮島さん:推薦入試っていうのがどんなものなのかわからなくて、特に要項に書いてある「自ら設定した課題」だったり、「卓越した探究心」だったりということが何なのか、どうやって示したらいいのか、ということがよくわかりませんでした。

なのでまずは、紙に「在学中にやっていたこと」「大学生の時にやりたいこと」を書き出してみることにしました。

 

 

ーー過去・現在・未来でまとめたんですね。その作業を経て、「自ら設定した課題」や「卓越した探究心」をどうやって示したらいいかという解は出ましたか?

 

 

宮島さん:私は論文という形で示すことにしました。というか、逆にそれ以外に方法が見出せなかったんです。

論文を書く時にはまず課題設定が必要ですよね。そこで、自分で課題を設定して、それについて論文の中で探究していくという形を取ることにしました。

 

 

ーー論文という形が、それら二つを示すことになるのではないかと思ったんですね。推薦入試の前までに論文を書いたことはありましたか?

 

 

宮島さん:ほぼなかったですね。短い小論文とかはありましたが、本格的な長いものは経験がありませんでした。なので、「大学での論文の書き方」みたいな本とかを読んで勉強しながら書き進めていました。

 

 

「自ら課題を設定」

 

ーーはじめての本格的な論文執筆ということですが、どうやってテーマを設定していったんですか?

 

 

宮島さん:まずは広いテーマ・課題から始まって、書いていくうちに少しずつ狭めていった感じです。先生に見せては「まだテーマが広いよ」と言われて、書き直しては見せて、というふうにして、何回も書き直した結果ですね。

 

 

ーー先生にフィードバックをもらう中で、テーマを狭めていくことができたのですね。

 

 

宮島さん:そうですね。課題を設定するのは、論文執筆の上で一番と言っていいくらい大変でした。論文上で設定する課題はかなり狭くしないといけないけど、自分の課題意識はその枠を超えた広いものがありました。それを絞ったり、面接の時に「私はこんなことも考えているけど、ひとまず今回はこのようにして論文にまとめました」とアピールしたりするのは難しかったですね。

 

 

ーー課題を設定することの難しさがよくわかりました。特に、これを「自ら」やらないといけないというのが難しいところであり、かつ探究には不可欠の要素ですよね。テーマを絞って、何を扱うかをピンポイントで決めること。過去に扱われていない話題を探し出して、それについて深堀ってみること。こうしたことを自分なりにやることで、はじめて研究や探究で新規性を出せるということですよね。


東京大学の一般入試においても、例えば世界史で600字程度の「大論述」と言われる問題があります。しかしあれはあくまで入試問題なので、テーマや筋道は大学側から予め決められている。これは探究・研究とは言わないですよね。当然、自ら課題を設定するほうが圧倒的に難しいと思います。

 

ーー宮島さんが「自ら」決めてやったからこそ最後までできた、という実感はありますか?

 

 

宮島さん:私は、大学に行く理由を明確にしてから大学受験を始めたかったんです。推薦入試の準備をするに当たって、6年間やってきた生徒会活動がどんなものだったのかということを振り返ったところ、大学で学びたいこととか、大学で学ぶ意義っていうのが見えてきました。

これは、自分で扱うテーマを決めて、それに向けて調べたり振り返ったりしたからこそだと思います。

 

 

ーー自ら設定した課題によって、自分自身と向き合う経験になったんですね。

 

 

宮島さん:そうですね。

 

 

「卓越した探究力」

 

ーーありがとうございます。続いて、「卓越した資質・能力」のほうに移ります。「卓越」を示すためには相当質の高いものを書かないといけないと思いますが、そのためにどういう工夫をしましたか?

 

 

宮島さん:自分の経験は自分だけのものなので、自分の経験からわかったことに重点を置きながら書くことを心がけました。

 

 

ーーつまり、「卓越した」というのは、自分固有の経験が大事だと思ったということですか?

 

 

宮島さん:そうですね。

 

 

ーーなるほど。先ほどの「自ら課題を設定」というのと関連して、自分なりの経験や体験を活かす、というのが「卓越」においても重要だということですね。

「卓越した探究力」ということなので、僕の中ではなんとなく「調査力」や「考察力」のような、探究のプロセスで必要な力が優れているという話として捉えていました。しかし、そもそも新規性のある課題、自分なりの課題を立てられるというのも「卓越」の要素になりそうですね。

 

 

宮島さん:それでいうと、自分が探究したいと思った課題に対して色々な方向から考えられるか、ということは意識していました。さらに、先行研究を調べる中で、読み手との共通認識を得なければならないということも先生と話していました。つまり、独りよがりな内容であってはいけないということですね。

私は生徒会活動についての論文を書いたので、生徒会活動の歴史や他校の事例、先行研究などをしっかりと辿ろうと意識していました。

 

 

ーーこれまでの歴史や先行研究を踏まえて、その上で自分の固有の経験を押し出したんですね。

 

 

宮島さん:そうですね。「探究力」というところでいうと、自分で大学の先生に会いに行ったり、高校の外部の人と話したりした経験も、自分で動いた経験として、探究になるんじゃないかと思って書きました。

 

 

ーーありがとうございます。論文執筆をしている時、すなわち探究しているときは楽しかったですか?

 

 

宮島さん:楽しいというのとは少し違いますが、自分でやりとげたいという気持ちは強かったです。でも実際は何をやったらいいかわからなくて、ずっと手探り状態でした。今でも「卓越した探究」とは何なのかわからないくらいなので、当時は余計難しかったですね。

 

 

ーーそうですよね。個人的には「巨人の肩に乗る」という言葉がある通り、過去の研究者が積み重ねてきた業績を吟味しながら、少しでも新しいものをその上に乗せる、というのが探究・研究だと思っています。


ここにおいて「卓越」している、つまり群を抜いて優れていると言えるには、どれだけ過去の積み重ねを丁寧に参照できるか、どれだけ自分なりの新規性をもたせられるか、そして周りよりも早い段階でそれを実践できているか、というのが重要になるということですね。宮島さん含め、教育学部の推薦入試を通過した人は、そこができていると評価されたんだなと改めて感じました。

 

 

自分の立てた課題に粘り強く向き合う

 

宮島さん:「丁寧に」「自分なりに」というところに関連して、自分で課題設定したことに対して、粘り強く、熱い気持ちで向き合っていけるかというのが「卓越」に大きく関わってくると思います。

私がやった探究は、学術論文と言えるほどのものではなくて。甘い部分もたくさんありました。

それでも合格できたということは、論文の純粋な完成度以上に、設定したテーマに対する思いや情熱の方を見てもらえたんじゃないかと思っています。一つの課題に対して、卓越した執着心を持って向き合っていた、と言えるかもしれません。

 

 

ーーなるほど。成果物がハイレベルかどうかというよりは、その課題に対する思いや粘り強さを見られているんじゃないか、それこそ「卓越」なんじゃないかということですね。

 

 

宮島さん:他には、一貫性や、「あなたがどう思っているのか」というところは重要だと思います。会場では、かなり完成度の高い発表をしていたのに不合格になった人がいました。なんでだろうと考えたところ、「その人がやる意味ってなんだったんだろう?」という考えに至りました。成果物自体は凄かったけど、その成果物の中に「その人の姿」が見えなかったんですよね。

 

 

ーーとても興味深いお話ですね。ちなみに宮島さん自身の思いを強めた原動力はなんだったんでしょう?

 

 

宮島さん:生徒一人一人はいいものを持っているのに、それが活かされない状況がもったいないと思っていました。背中を支えてくれる人がいれば、もっと活躍できるんじゃないか、もっと個性や才能を活かせるんじゃないかと思っていたんです。

それに、こうやって「自分の持っている力を存分に発揮できない」という問題がある社会で自分自身生きていくのが嫌だな、と思っていて、そんな社会を変えたいと思っていたのもあります。

 


ーーありがとうございます。ここまでのお話から、宮島さんが推薦入試を通して「探究力」「自ら課題を設定すること」「自分を見つめ直すこと」を身に着けたんだな、ということがわかりました。こうした力は大学や社会で活かされていると感じますか?

 

 

宮島さん:勉強に対するモチベーションや、「こんなふうに思考したい」という思いが持てるようになったと感じています。また、高校時代の経験と結びつけながら考えをより発展させるということも出来ていると思います。

 

 

ーー自分を見つめ直す、向き合うということについてはどうでしたか?

 

 

宮島さん:自分でちゃんと選択できるようになりました。人に流されてではなくて、「自分は何を大切にしているのか」ということを自分自身に聞いてみて、価値観を見つめ直してから選択するようになりましたね。

 

 

ーーそれはとてもいいですね。「自分で選択する」というのはまさに主体性だな、と感じました。ありがとうございました。

 

 

宮島さん:ありがとうございました。

 

 

まとめ

 

今回の対談で、自ら課題を設定することの難しさや、そこで試行錯誤を重ねたからこそ得られるものがあることがわかりました。また、「なぜ自分がやるのか」という理由付けや、課題に対して粘り強く向き合っていくことが求められているのではないか、ということも見えてきました。これらの要素は「探究」という範囲にとどまらない重要性がありそうですね。

 

次回以降も、他の学部の推薦生とともに、社会から求められている力について考えていきたいと思います!

 

河内誠人のプロフィール画像

河内誠人

カルペディエムLIFE編集長。法学部で勉強中。数年ぶりに紙のカードゲーム(デュエルマスターズ)復帰しました。