
公開 : 2021.08.05 | 更新 : 2021.11.22
日本人らしい主体性 ~相手を思いやる、その心とは?~
オリンピック招致を思い出してみる
こんにちは。山田です。
2020東京オリンピック開催に関してコロナの影響で紛糾していた期間は長かったですが、オリンピック招致の際に打ち出したキラーフレーズを皆さんは覚えているでしょうか?そう、「お も て な し」ですね。
滝川クリステルさんがプレゼン内で手振りもつけて非常に話題になりました。日本人の印象を際立たせる有名なフレーズです。もてなす、の代表的意味には、心を込めて相手を接客する、という意味があります。おそらくオリンピック招致の時にはこのような意味で用いられたと考えるのが妥当でしょう。
日本人特有だとされるこの文化。悪い見方をしてしまえば、相手のことばかり考えて主体性なく自分の意見を言うことができないとされることもあります。海外での日本人の評価で聞くこともしばしばあるのではないでしょうか。
しかし、意外かもしれませんが、そんな日本人特有の性格にも主体性が隠されていると思うのです。
先生の仕事
私がある人から言われた言葉で今でも大事にしていることがあります。
中学生の頃、夏休みなどの長期休みのタイミングでは大量の宿題が学校から出されていました。皆さんの中にも夏休み最終日に終わらない宿題に悪戦苦闘する経験をした人もいるのではないでしょうか。
かくいう私も宿題を溜めるタイプでした。夏休み終盤になって出された宿題に文句をぶつぶつ言いながら終わらせていました。

そんな文句ばかり言っていた私はこんなことを言われたのです。
「君、その宿題を出すために先生がどれくらい準備したのか、考えた?」
私は答えに詰まってしまいました。自分の目の前にある宿題だけしか考えていなかったからです。このプリント集を作るために先生は同じ分量の問題を見ているのだろうとしか当時の私は思っていませんでした。
しかし、よく考えたらそんなはずはありません。問題を選ぶときに、生徒のレベル感や問題の質などを考慮するために選定をしているはずです。ですから、先生は問題を解いた上で使わなかった問題があるはずです。
生徒である私からは見えない仕事を見ようともせずに、私は先生が出した宿題に文句を言っていたのです。一方的に不満ばかりをぶつけていた私はその言葉に気づかされ、非常に恥ずかしくなったことを覚えています。
目の前の宿題をやらされているものだと考えている内は絶対に気づくことはできません。出された宿題の意図を読むことではじめて、指摘されたような見えていない先生の労力に気づくことができるのです。そして、不満ではなく、どうやったら自分にとって意味のある宿題としてできるのか考え、宿題をやるようになりました。
剣道との共通項
相手の意図を読んだ上で自分がどうすれば良いのか考える。これは日本の武道の一つである剣道に通ずるものがあると思います。
剣道で、相手のことを全く考えずにむやみやたらに自分の思っていることだけを考えて竹刀を振り回しても勝つことはできません。相手の動きを見て、相手の思考を考慮に入れた上で自分の攻め方を考える。試合に勝つためには相手のことをしっかり観察して考えを読み取ることが重要になってきます。
宿題を出す例と照らし合わせてみます。先生がその問題を出した意図を読み、自分で意図を読んだ結果の解答を記入する。相手の動きから意図を読み、意図を読んだ結果攻め方を考える。本質はズレていないですね。
日本人らしいは「曖昧さ」ではない!
日本人は相手のことを慮るが故に自分の言いたいことが言えない特徴がある、とよく言われますが、言いたいことが言えないというところにあまりにもフォーカスされすぎていると思います。しかし、剣道で自分から攻めに行かなかったら試合に勝つことはできません。
本質的には相手の意図を汲み取った上で、自分の主張をするということまでが日本人らしさであるはずです。剣道の例を取り上げましたが、文化系である茶道などでも同様です。
相手の気持ちを察することには変わりありません。ところが、その結果として自分の意見に対してお茶を濁すということで「日本人らしさ」が表象されていることは違うのではないかと思います。
「お も て な し」でも相手を接客するまでが意味として含まれています。
例えば旅館では、相手に合わせて全て相手の思うままに動くような接客ではロボットと変わりません。相手のニーズに合わせて様々なプランを提案していくまでが素晴らしい接客対応なのではないでしょうか。次の日の観光のプランを提案し、それに合わせて朝食のタイミングを提示されたら、宿泊客も対応が良いと感じることでしょう。
宿題の例でも触れましたが、やらされていると感じているうちは、過去の私がそうだったように不満が溜まる一方です。相手の意図を考えると、意見を考えそれを伝えられるようになると思います。
相手のことを考えて自分の意見を伝えようとする主体性。これこそが本当の日本人らしさなのではないでしょうか。

山田亮進
リアルドラゴン桜プロジェクト講師。主体的に勉強する楽しさを伝えるため日々奮闘中。オンライン授業の毎日で、生活は完全なニート状態。