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法学部で法曹になりたい人が実は5人に1人もいないワケ

法学部で法曹になりたい人が実は5人に1人もいないワケ

 

こんにちは!東大法学部4年の河内です。

 

法学部と言ったら、皆さんは何をイメージしますか?

 

「弁護士になるための勉強をする!」「司法試験を受ける!」と思う人も多いのではないでしょうか。医学部に行った人がお医者さんになるように、法学部に行った人は弁護士になるだろう、という発想ですね。

 

実は僕自身、「法学部に行きたい」と親戚の叔母に伝えたところ、「将来何かあったら弁護してね!」と言われたことがあります。

 

僕はただ「法学部に行きたい」と言っただけで、「弁護士を目指しているんだ」なんて一言も言っていないのに、です。こんなふうに、法学部志望で似たような経験をした人は結構多いと思います。

 

しかし実は、世間のイメージとは裏腹に、法学部の中で法曹(弁護士・検察官・裁判官)になりたいと考えている人ってむしろ少数派なんです。法務省と文部科学省が2019年に実施した調査によれば、その割合はなんと17%以下。法曹を志望している人は、5人に1人もいないということです。

(参考:法曹養成制度改革連絡協議会「資料1ー30 法学部に在籍する学生に対する法曹志望に関するアンケート調査結果」

 

これって、結構意外じゃないでしょうか。

 

そこで今回は、「法曹になりたい法学部生はなぜこんなに少ないのか?」ということについて紹介します。法曹志望者が世間の想像よりも少ない理由を知ることで、法学部の知られざる真の魅力も見えてくるはずです。

 

 

 

1.「法学」部では「政治学」も勉強する

 

まずそもそも、法学部で勉強するのは法学、法律だけではありません。

 

実は、法学部では「政治、政治学」も勉強するんです。

 

そして、法学部生の中には、法律をあまり勉強せず、政治の方を中心に勉強する人たちがいます。法学部の中でも、いわゆる「政治学科」などと言われる学科に所属している人たちです。

 

例えば東大には「政治コース」というものがあります。このコースは、文字通り政治について勉強する人が集まっているところです。彼らには、法律の授業をほとんど取らず、政治学の授業を中心にとっている人が多いんです。

 

そうした政治系の学科・コースにいる人のような、法律をメインに勉強していない人たちが弁護士などをあまり目指さないのは納得できますよね。

 

そして、仮に政治をメインに勉強している人が法学部の半分を占めているとしたらどうでしょう。この時点で、法学部の約半分は法曹志望でないということになります。「法学部=弁護士!」という考え方が、早くも崩れてきたのではないでしょうか。

 

ちなみに、なぜ政治学を法学部で学ぶかといえば、それは、法律と政治が互いに強く関係しあっていると考えられてきたからです。

 

「近代社会においては、法と政治は、ともに不可欠であるだけでなく、政治が法を定め、実現し、そして、法が政治を形づくり、導くという意味で、両者は、相互に支えあう関係にあって、分かちがたく結びついているからです」(引用:東京大学「法学部のご紹介」

 

これは東大法学部が示した文章の一部です。つまり、政治(国会や、そこに出席する国会議員たち)が法律を作り、作られた法律によって国家や国民の動き方、政治が動いていく。そういう関係だからこそ、法と政治の2つを一緒の学部で勉強しているわけですね。

 

ただし、政治学は別の学問との関係もかなり強いと言われています。それが経済学です。政治と経済の関係を重視した結果生まれたのが、早稲田大や明治大などにある「政治経済学部」になります。

 

いずれにせよ、法学部では法律ばかりやっているわけではない、政治のことも勉強できるということが分かっていただけたはずです。

 

 

 

2.司法試験は超難関試験、誰もが目指せるものじゃない

 

法曹志望が少ない2つ目の理由は、司法試験の難易度が極めて高いことです。

 

皆さんは、司法試験の合格率がどれくらいか知っていますか? 実は、司法試験の合格率は約4割なんです。

 

と、これだけ聞くとそれほどでもないように見えますよね。しかし実は、司法試験を受けるためには、前提として超えないといけないハードルがあるんです。それが、「法科大学院修了」、または「予備試験合格」です。

 

まず、法科大学院を修了するには、当たり前ですがまずどこかの法科大学院に入学しなければいけません。そして、入学するためには当然入試に合格することが必要ですし、入学から卒業までには最低2〜3年かかります。

 

ではもう一つの予備試験はどうかというと、こちらは合格率が約2%という超難関試験なんです。毎年およそ2万人が受験しても最終合格者は400人程度ということで、並大抵の努力では合格できないことが分かりますよね。実際、僕の同級生には予備試験に挑戦している人もいますが、みんな相当苦労しています。大学卒業前に合格できるのは、東大法学部ですらほんの一握りです。

 

それだけのハードルを越えた人たちでさえ4割しか受からないと考えると、司法試験の難しさがわかると思います。

 

そうなってくると、「法学部だからみんな司法試験」というのもありえないことがわかってきます。法学部生がいくら真面目に勉強していたとしても、これだけの難関試験に全員トライするというのは考えづらいですよね。

 

 

 

③法学部で身につくのは、社会のどこでも役立つ「リーガルマインド」

 

最後に重要なのが、法学部で身につくのは「法律に関する純粋な知識」だけではないということです。

 

もし仮に、法学部では法律や政治の知識しか身につけられないなら、法学部卒の人はみな法曹や、法律・政治関連の仕事につくしかないかもしれません。

 

しかし、法学部で身につけられるのは、もっと幅広いところで活かせる力です。それはよく「リーガルマインド」と呼ばれます。言い換えれば、「論理的思考力」「問題解決力」です。

 

と、いきなり言われてもよくわからないですよね。そこで、刑法の勉強を例に考えてみます。

 

例えば、刑法199条は「人を殺した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する。」と定めています。

 

この条文を見たときに法学部生がまず考えるのは、「人」や「殺した」という言葉の意味・定義です。まず「人」と言っても、お腹の中にいる赤ちゃんや脳死状態の人を「人」と言えるのか、というのが一つ問題になります。

 

その上で、「Aさんにナイフで刺されたBさんは、重症を負ったが一命をとりとめ、救急車で搬送された。しかし、その搬送途中に救急車が別の車と衝突し、Bさんが亡くなってしまった」という具体的な事件を考えてみてください。

 

ここで、Bさんが「人」に当てはまるのは問題ないですよね。では、Bさんの死因についてはどうでしょう。確かに、Aさんにナイフで刺されたことによってBさんは重症を負っていますが、その時点ではまだ生きています。Bさんが亡くなった直接の原因は、車との衝突のようです。

 

このとき、Aさんは「人(Bさん)を殺した」と言えるでしょうか?

 

ぱっと見、なかなか結構難しい問題ですよね。このような問題を考える過程で、「具体的な事件を法律というルールに当てはめて解決するにはどうすればいいか」という力が養われます。まさにこれが「リーガルマインド」です。

 

そして、「ルールを丁寧に読み解いた上で、具体的な事例をそのルールに当てはめる」という力は、社会のどこに行っても役立ちます。だからこそ、法曹・法律の専門家だけでなく、社会のあらゆるところに飛び立っていける法学部生が多いわけですね。

 

 

いかがでしたか?

法曹志望が少ない主な理由は、以下の3つでした。

 

①法律だけでなく、政治の勉強もする

②司法試験は超難関試験

③法学部で身につくのは、社会のどこでも役立つ「論理的思考力」

 

つまり、法曹を目指せる人がどうしても限られてしまう一方、法学部で身につけた「リーガルマインド」を活かす道はいくらでもあるので、無理に法曹を目指さなくてもいいということです。だからこそ、法曹を目指す人が少なくなるんですね。

 

皆さんの法学部に対するイメージを変えられていたら幸いです。

 

河内誠人のプロフィール画像

河内誠人

カルペディエムLIFE編集長。法学部で勉強中。数年ぶりに紙のカードゲーム(デュエルマスターズ)復帰しました。