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東大生が考察!タコピーは「マッチ売りの少女の”マッチ”」である!

東大生が考察!タコピーは「マッチ売りの少女の”マッチ”」である!

 

※本記事は『タコピーの原罪』のネタバレを含みます。ご注意ください。

 

こんにちは!東大生作家の西岡壱誠です。

 

僕は趣味でよく漫画を読み、それについて色々考察してみたりすることがあります。今回は、ここ最近で一番の話題作と言っても過言ではない『タコピーの原罪』について、東大生の僕なりに考察してみました!

 

タコピーとはそもそも何なのか? タコピーの「原罪」とはどういう意味なのか? などなど、この作品には多くの謎があります。そこで、今回僕が紹介する考察が、皆さんが自分なりに考えつつ作品を楽しむ助けになれば幸いです。

 

地獄のような展開と、残された謎

 

いや、地獄か?

 

というのが読んでいる時の僕の読んだ感想でした。

 

※以下、各話のネタバレを含みます。ご注意ください。

 

1話→「絵柄はちゃめちゃ可愛いのに1話にして主人公マミった(注:悲惨な最期を遂げた)んだけど!?」

4話→「えっ死んだ!?!?!? 死んだの!?!?!? 4話にして2人の小学生女子と1匹の犬が死ぬ漫画ってなんだよ、聞いたことないぞ?」

4話→「えっしずかちゃんここで笑うの!? しかも『タイムリープできるんだからどんなにやばいことになっても大丈夫だよね』って展開じゃないの!? やっば!?」

5話6話→「いやまりなちゃん家地獄やん。っていうかこの作品の出てくる家庭全部毒親って何。毒親見本市か?」

8話9話→「東くんーーーー!? しずかちゃんーーーー!? しずかちゃんって本当に魔性の女の血が入ってる娘だったんだなぁ!?」

11話→「よくわからないじゃねーーーーーよ!!!!!!! おいふざけんな!!!!」

12話13話→「ええええええまりなちゃん!?!?!? 何この展開!? これはこれで地獄!!!!」

14話15話→「あ、しずかちゃんこれ異母姉妹殺してるねぇ!?!? 罪に罪を重ねてその上にまた罪重ねちゃったねえ!?」

 

と、1話1話ツッコミを入れて読んでいました。

 

でも最後は、ちょっとビターながらもしっかりとハッピーエンドになったんですよね。ああ、タコピーはちゃんとみんなをハッピーにできたんだなあと、読んでいて幸せな気持ちになりました。

 

しかし、それはそれとして。冒頭でも言った通り、僕は、この『タコピーの原罪』には一つ謎が残っていると思っています。

 

果たして、原罪ってなんだったのだろうか、という謎です。

 

タコピーは、確かに罪を犯しました。

 

1話でしずかちゃんに秘密道具をあげたことも、まりなちゃんを殺してしまったことも、いわゆる「罪」でしょう。

 

しかし、「原罪」は単なる「罪」とは違います。

 

「罪」とは、ルールなどに反する行為のことを言います。基本的には、ある特定の行為について話そうとするときに用いられる言葉です。

 

一方「原罪」とは、「人間が生まれ持った罪(の性質)」のことを指します。もともとは、聖書の「アダムとイブが神に背いて木の実を食べてしまった」という、人類がはじめて罪を犯したというエピソードに由来する言葉です。

 

アダムとイブは、「どの木からでも思いのまま食べてよい。しかし、善悪の知識の木からは、食べてはならない」と命じられていました。2人が禁じられていたほぼ唯一の行為こそ、その木の実を食べることでした。

 

つまり、「原罪」とは、今を生きる私たちが起こす様々な違反行為のことではなく、人が一般に有している罪の性質や、その性質の元になっている最初の罪のことを言うのです。もっと言えば、「生まれ持った使命、重要な掟を破ったこと」こそ「原罪」です。

だとすると、タコピーの「原罪」も、しずかちゃんに秘密道具をあげたことや、まりなちゃんを殺したことなど、一つ一つの違反行為ではなくなるはずですよね。

 

そもそもです。

 

タコピーってなんなんでしょう。

ハッピー星人ってなんなんでしょう。

なぜ、まりなちゃんの前に降り立ち、しずかちゃんと会ったのでしょう。

 

ここから、この謎に1つ1つ迫っていきます。

 

1 タコピーはハッピー星に人を連れてくる仕事をしている

 

まず前提として、タコピーの仕事については作中で明言されています。

 

13話にて、ママは「あなたは一人でここにきた。ハッピー星の最も大事な掟を破ったのです。二度と星に戻ることは許されない」と言っています。

 

タコピーの「しずかちゃんぶっ殺すわ!」という発言が強烈過ぎて、ついつい読み飛ばしてしまいがちなママのこの発言。しかし、よく考えてみるとかなり意味深です。

 

この言葉を素直に解釈すると、タコピーの「原罪」は「一人でここにきたこと」だと言えそうです。

 

実は1話において、タコピーはしずかちゃんに対して「ハッピー星に来てほしい」と発言しています。この発言は、タコピーがしずかちゃんをハッピー星に連れてこようとしているとも取れます。つまり、タコピーという生物は、ハッピー星に地球人を連れてくるのが仕事なのではないでしょうか。

 

そう考えると、ママが「一人で帰って来た」=誰も連れてこなかったタコピーに対して怒ったのにも納得がいきます。

 

2 タコピーは、他者に危害を加えるものを連れて行く?

 

ここで一つ、僕の考察を紹介します。それは、

 

「タコピーは、将来誰かを傷付けてしまうほど弱った子供の前に現れて、誰かを傷付ける前にハッピー星に連れてくるのが仕事」

 

という説です。

 

作中で明確にタコピーが懐いている人間は、まりなちゃんとしずかちゃんです。この作品は、実質的にこの2人の物語と言ってもいいでしょう。

 

そして、この2人の共通点として、まずは「全然ハッピーではない」ということがあります。そしてそれに加え、「親から虐待されている子供で、誰かを殺してしまうほどの攻撃性を持っていて、自分の力ではどうしようもできない」という点も共通しているんです。

 

まりなちゃんはしずかちゃんを自殺に追い込み、お母さんを殺しました。

 

しずかちゃんは、直接手を下している描写こそほとんどないものの、14話でおそらく自分の妹を殺したか、少なくとも喋れない状態にしています。

 

そんな危うさ、攻撃性を持った2人を助けるために、タコピーは彼女たちと会ったのではないでしょうか。

 

そして、彼女たちを救う方法こそ、ハッピー道具を見せるのではなく、ハッピー星に連れ帰ってハッピーになってもらう、というものなのではないでしょうか。

 

では、タコピーはなぜそんなことをするのか。

 

それは、誰も彼女たちを救えないからです。

 

彼女たち自身は悪くない、と言っていいでしょう。彼女たちが誰かを攻撃したり殺したりしたとしても、それは彼女たち自身の問題ではない。むしろ、その家庭環境にこそ問題があるはずです。

 

「えっじゃあどうすればよかったの?」

 

15話でしずかちゃんはタコピーにそう怒りますが、この疑問はもっともです。あの場面においては、誰がどう見ても彼女は悪くないはずです。まりなちゃんも同じく悪くないでしょう。

 

なんと言っても、彼女たちは無垢な子供です。その子供たちを救えないのは、大人の責任ではないでしょうか。

 

そんな、大人の無責任によって大きな問題を抱えてしまった子供たちを救うことこそ、ハッピー星人の使命なのではないかと考えています。

しかし、本作においてはそうなりませんでした。それは、タコピーが全く違う解を出したからです。

 

3 タコピーの原罪

 

タコピーは、最後のタイムリープで消えてしまいました。そうして、ハッピーの力で彼女たちを救ったんです。

 

先ほども言った通り、彼女たちは大人から助けてもらえませんでした。

 

さらには、幸せな、傷付いていない子供たちからも助けてもらえません。それどころか、東くんのように傷付けてしまうことになりかねないのです。

 

だからこそハッピー星人たちは、救われない子供をハッピー星に連れて行くことを仕事にしている。

 

でも、タコピーはそれとは全く違う解決策を提示しました。すなわち、「救われない子供たち同士が友達になる」ということです。

 

まりなちゃんとしずかちゃんは、最終話でおどろくほど仲良くなっている様子が描かれています。

 

「まりなちゃんのお母さんいつもやばいじゃん」

「誰のせいだと思ってるんだよ」

 

こんなトークが成り立つなんて、めっちゃエモくないですか? あの彼女たちが、そんな軽口を叩きあえるなんて。最初の頃からは想像もできません。

 

こうして、ハッピー星に連れて行く以外の救済方法を実践したタコピー。

 

そう考えると、僕の解釈におけるタコピーの「原罪」とは、「救われない子をハッピー星に連れてくる、という掟を破ったこと」になります。

 

こうやって考えてみると、ハッピー星とは死後の世界の天国なんじゃないか、とも思えてきます。

 

タコピーは「マッチ売りの少女」のマッチ

 

生きているうちは、辛いことばかり。どうしようもない状況に陥って、死にたくなることもあるでしょう。

 

H・C・アンデルセンの童話、「マッチ売りの少女」では、この世で幸せを得ることができず、死に行く中でしか幸せを得られなかった少女が描かれました。

 

つまり、子供を「ハッピー星」=天国に送る役目を持ったハッピー星人たちは、マッチ売りの少女のマッチだったとも言えるわけです。

 

しかしタコピーは、本作においてその役割を放棄しました。これこそ、タコピーの「原罪」なのでしょう。

 

彼女たちが今生きている世界の中で幸せを得られるならそれでいいと考えたタコピーは、自分の役割を捨て去ってでも、彼女を、彼女たちを、救おうとしたのです。

 

まとめ

 

さて、いかがだったでしょうか。以上が僕の『タコピーの原罪』考察です。

 

人間は、生きていると辛いことをたくさん経験します。傷付いたり、苦しかったりすることもあります。

 

しかし、それでも明日を生きていかなければならない。

 

その時に大切なのは、「おはなし」であり、友達です。

 

そんな、当たり前だけど忘れがちなことを思い出させてくれる作品が『タコピーの原罪』だったのではないでしょうか。

 

西岡壱誠のプロフィール画像

西岡壱誠

偏差値35、2浪という崖っぷちの状況で開発した独自メソッドで東大合格を果たす。著書多数。好きな寿司ネタはサーモン。