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東大生が「風桶」で解説!「土地が低いと株式会社ができる」

東大生が「風桶」で解説!「土地が低いと株式会社ができる」

 

こんにちは!東大生の西岡壱誠です。

 

昨日、3月11日の23時頃から、「風桶アカデミー」という番組に出演していました。現代に通じる「風桶」理論をアンミカさん、石原良純さん、ハライチ岩井さんにプレゼンするというものです。僕も、「お年玉と金融リテラシー」に関して力説してまいりました。皆さん、ご覧いただけたでしょうか?

 

今紹介した通り、今回の番組は、「風が吹けば桶屋が儲かる」という有名なことわざにちなんで、「一見全く関係のない身の回りの出来事同士が、実は論理的につながっている」ということを解説するというものでした。

 

番組で紹介されただけでも、「風桶」な出来事はたくさんありましたよね。しかし、この世には「実はこれってつながっているんだよ」というものが隠されています。

 

例えば、今回この記事で紹介するのは、現代まで残り続ける「株式会社」や「証券取引」などが誕生したのは、あることがきっかけだったんだ!というものです。誕生した経緯について解説していきます。

 

今も当たり前に残っている仕組みの誕生について気になる方はもちろん、世界史を勉強中の方にとっても役立つはずです!

 

株式会社ができたのは、オランダの土地が低かったから!?

 

株式会社や銀行、証券取引など、「金融」にまつわる仕組みは、今では当たり前のものになっています。

 

「金融」という言葉を使うと難しく感じる人もいるかもしれませんが、簡単に言えば「お金を持っている人が必要な人にお金を貸すよ!」ということです。

 

元手となるお金が足りなくてビジネスやショッピングができない人に、「しばらく返さなくていいけど、返すときはちょっと大目に(=利息付きで)返してね!」と言って貸す。これが「金融」です。

 

そして、こんな仕組みができたのは、実はオランダの土地が低いからなのです。

 

①オランダは土地が低い

 

オランダは、土地がとても低い国です。なんと、国土の1/4が海より低い位置にあるほど。また、オランダの国名をオランダ語で呼ぶと「ネーデルラント」といいますが、これは「低い土地」という意味になります。それくらい低地であるということです。

 

そして、この「土地が低い」という特徴が、オランダの様々な特徴を形作っていきます。

 

②オランダは水位に気を使う

 

さて、土地が低いところで生きる人たちにとって、一番重要なのは「土地をもっと高くする」「土地から水を追い出す」ということです。

 

低地で1番気をつけなければいけないのが水害です。高潮が来たり、川が洪水を起こしたりしたら、それこそひとたまりもありません。

 

そこで、こうした問題を解決するために行われたのが、堤防建設や川の水位調節です。また、「干拓」という事業に挑戦する場合もありました。干拓とは、

 

①湖や入江を取り囲むように堤防を作る

②その堤防の中にある水を、頑張って外に出す

③完全に水がなくなるまで続ける

 

というように進めていきます。しかし、排水や干拓を人力だけでやるのは至難の業です。

 

というのも、海よりも水位が低いのは変わっていないので、すぐに水が溜まってしまい、なかなか外に出ていかないのです。一回水を抜いたくらいでは、元に戻ってしまって意味がありません。何度も何度も、ずっと水を外に出す仕組みがないとダメなのです。

 

そこで、オランダ人はあるものを利用することを思いつきます。

 

③オランダには風車ができる

 

その「あるもの」というのは、風車のことです。ドイツやフランスから風車の技術が伝わった後、オランダ人がこれを排水や干拓に使うことを思いついたと言われています。

 

みなさんの中には、オランダといえば風車を思い浮かべる人も多いでしょう。そんな風車ですが、もともと景観のために作られたわけではありません。実用的な発明品として使われていたのです。

 

風車とは、風の力でプロペラが永遠に回り続けるものです。風車を干拓したいところに設置して、風車の回る力を借りて水を外に出し続ければ、ラクに干拓を行えるようになるというわけです。

 

風車には、当然ながら風頼みという弱点があります。しかし、オランダは「偏西風」という風が年中吹く地域です。それに、土地が低くて山も多くないため、風を阻まれることもありません。よって、弱点が気になりにくいのです。

 

こうして風車がどんどん建設され、干拓も進んでいきました。そして、この干拓により、なんと国土の20%以上が作られたのです。「世界は神が作ったが、オランダはオランダ人が作った」という有名な言葉は、ここから来ています。

 

こうして土地を拡大したオランダは、独自の路線を進み始めます。

 

④オランダ、独立する

 

土地を拡大したオランダが同時に進めたのが、「スペインからの独立」でした。もともとオランダは、ライン川をはじめとする大きな河川の河口に位置しています。それ故、多様なヒト・モノ・カネが行き交う商業の結節点だったのです。特に商人の町として栄えていたのは、南部の町・アントウェルペンでした。

 

さらに、様々なモノと一緒に、ルターがはじめた宗教改革の思想も入ってきました。この宗教こそ、スペインから独立する決定的な要因の1つとなりました。スペインはカトリックを信仰していましたが、ルターが打ち出したのは、カトリックに反対するプロテスタント。さらにカルヴァン派と言われる人々も現れ、スペインとの関係性はどんどん怪しくなっていきます。

 

そこで、力を蓄えていたオランダは、スペインとの独立戦争の末、独立することになります。

 

⑤オランダ、いろんな国の商人がどんどんやってくる

 

オランダ独立戦争が起こる前から栄えていたアントウェルペン(現在はベルギーの都市)。この街は、戦争のさなか、スペインによって占領されてしまいます。

 

主に南部で戦争が展開されたこともあって、人々は北部へと流入していきました。そこで、新たな商業の中心地として栄えたのが、現在のオランダの首都・アムステルダムです。

 

土地も人口も揃っていて、情報も入って来やすい。そんなアムステルダムには、とにかく多様な人々や優秀な商人たちが揃いました。ほかの国で迫害されているようなユダヤ人商人も、カルヴァン派と呼ばれる新教の人も、この国では迫害を免れることができました。

 

⑥オランダで株式会社の仕組みができる

海上交通・河川交通ともに優れ、来るものを拒まない文化もあり、商業が発展する条件に恵まれたオランダ。しかし、そんなオランダにも、一つ問題がありました。

 

それは、「リソース不足」です。

 

スペインやイギリスなどは、建国から歴史が長いため、領民も土地もたくさん保有しています。それに、絶対君主制を取っているスペインでは、国王が「やる」と言えばお金が集まるようになっていました。例えば、コロンブスがアメリカ大陸を発見したのも、スペインの王様からお金を出してもらってのことです。

 

しかし、オランダは歴史がない国で領民も土地も植民地もありません。お金がそんなにないのです。なにか大きな事をしようと思ったら、みんなでお金を出し合わなくてはなりません。

 

それに、もともとオランダは、ポルトガルを通じてアジアと貿易を行っていました。しかし、1580年、肝心のポルトガルがスペインに併合されてしまいます。オランダがスペインと対立関係していたことは先ほどお伝えしました。つまり、オランダはもうポルトガルに頼れなくなってしまったのです。

 

しかしアジアからは、当時のヨーロッパで超高級品だった香辛料を入手できます。こんなに美味しい話をただで手放すわけにはいきませんよね。

 

アジアと交易するためには、他人の手を借りず自分たちだけでやるしかない。しかし、まとまったお金を出してくれる絶対君主の国王もいない。

 

さてみなさん、もうお気付きですね?

 

これこそが、「金融」という今でも残る仕組みを作り上げるきっかけになりました。つまり、「お金を持っている人が必要な人にお金を貸す」という仕組みがここで確立したのです。

自力で貿易するために航路を開拓する商人たちに出資した人たちこそ、初期の「会社」です。そして、小さな会社の乱立による混乱を避けるため、それらを統合する形で形成されたのが、世界初の株式会社・東インド会社でした。

 

株式会社ができたことで、株の売買も活発化します。そこで取引のために設立されたのが、アムステルダム証券取引所です。さらに、外国貿易が発展するに伴い、大量のお金を用意する必要が出てきました。そこで出来たのがアムステルダム振替銀行です。これも、当時のヨーロッパではかなり進んだ施設でした。

 

いかがでしょうか?「土地が低い」という特徴から、世界の経済を動かす金融のシステムが生まれた……。そう考えると、非常に面白いと思いませんか?

 

以上の文章は、『現役東大生の世界一おもしろい教養講座 正しく未来を見通すための「地理的思考」入門がもととなっています。今回紹介したオランダと金融の話はもちろん、「SNSが生まれたのは、農業が発達したからだ」「民主主義が生まれたのは、ユーラシア大陸に砂漠があったからだ」などなど、「風桶」的に起こった世界の事情を解説しています。ぜひご覧ください!

 

参考文献

桜田美津夫『物語オランダの歴史 大航海時代から「寛容」国家の現代まで』(中公公論新社、2017)

佐藤弘幸『図説オランダの歴史(改訂新版)』(河出書房新社、2019)

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西岡壱誠

偏差値35、2浪という崖っぷちの状況で開発した独自メソッドで東大合格を果たす。著書多数。好きな寿司ネタはサーモン。